le 7 juin , 2021
全統第1回 5月実施 p-94
「逆滴定」 「塩の加水分解とpH」
<解説の解説>
a 実験Ⅰ: 沈殿反応
沈殿の物質量は
nAgCl = w/M = 0.287/143.5 = 2.00×10-3 mol
( MAgCl = 143.5 g/mol )
沈殿反応は Cl- + Ag+ → AgCl だから
溶液 X 20 mL中の NH4Cl と,NaCl の物質量合計※は
※ どちらも Cl-をもっている
n合計 = nCl- = nAgCl = 2.00 ×10-3 mol ①
実験Ⅱ: 弱塩基の塩に強塩基でアンモニア発生
= 「弱塩基の遊離」
NH4+ + OH- → NH3 + H2O
過剰の塩酸に吸収 して溶液Yとし,NaOHで滴定 = 「逆滴定」
逆滴定のポイント :
酸や塩基がいくつ登場しても、結局最後に中和が完了するから
酸のトータルの水素イオンと,
塩基のトータルの水酸化物イオン※の物質量が等しい。
※ NH3はブレンステッドの塩基 NH3 + H+ → NH4+
nH+ = nOH-
anHCl = bnNH3 + cnNaOH (a,b,cは価数)
aCV/1000 = bnNH3 + cC'V'/1000
1×0.100×20.0/1000 = 1×nNH3 + 1×0.100×8.0/1000
これより,塩酸に吸収されたアンモニアは
nNH3 = 1.2×10-3 mol
溶液X 20 mL中の塩化アンモニウムの物質量は,
nNH4Cl = nNH3 = 1.2×10-3 mol ②
①,②より,溶液X 20 mL中の塩化ナトリウムの物質量は,
nNaCl = 8.0×10-4 mol
よって nNH4Cl : nNaCl = 1.2 : 0.8 = 3 : 2
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b 実験Ⅱ
吸収液Yを逆滴定すると, アンモニアは吸収した時点で中和して
いるから,実質的には 残っているHClとNaOHの中和がおこるだけ
HCl + NH3 → NH4Cl ※ H+ + NH3 → NH4+
HCl + NaOH → NaCl + H2O ※ H+ + OH- → H2O
滴下量8.0 mLの時点でNaOHの中和が完了し,
二種類の塩の混合溶液となる。
塩の溶液のポイント :
強酸と強塩基の塩は加水分解せず,溶液は中性。 NaCl
強酸と弱塩基の塩は加水分解して,溶液は酸性。 NH4Cl
(弱酸と強塩基の塩は加水分解して,溶液は塩基性。 例 CH3COONa)
よって 混合溶液は,NH4Clの加水分解により,酸性を示す。
滴定曲線の中和点付近でpHジャンプが起こる。
垂直部分の中点のpHが7より小さいグラフを選ぶ。
<参考> では,pHがおよそどのくらいになるか,
ラフに計算してみましょう。 このテクニック覚えるとトク。
NH4Cl 1.2×10-3 mol が 28 mL中に存在するから,
Cs = 4.29×10-2 mol/L
加水分解は
NH4+ + H2O = NH3 + H3O+ ※ H3O+ ≡ H+
加水分解定数
Kh = [NH3][H+]/[NH4+]
= [NH3][H+][OH-]/[NH4+][OH-]
= Kw/Kb ①
※ [H+]があるときは,分母・分子に[OH-]をかける。
↑ Kw,Kbで表せるように
※([OH-]があるときは,分母・分子に[H+]をかける。
↑ Kw,Kaで表せるように)
また,加水分解はわずかだから,
[NH4+] = Cs , [NH3] = [H+] と近似すると,
加水分解定数
Kh = [NH3][H+]/[NH4+]
= [H+]2/Cs ②
①,②より,
[H+]2/Cs = Kw/Kb
∴ [H+] = √CsKw/Kb
水のイオン積 Kw = 1.0×10-14 mol2/L2,
NH3の 電離定数 Kb = 2.29×10-5 mol/L とすると,
pH = (pCs + pKw - pKb)/2
= (-log Cs -log Kw + log Kb)/2
= { 2-log 4.29 + 14 - (5-log 2.29) } / 2
= ( 1.37 + 14 - 4.64 ) / 2
= 5.37
C: concentration s: salt h: hydrolysis w: water b: base
教科書 数研・東書などでは,化学平衡>電離平衡>発展>を参考に。